境界領域/知っておきたい
ベバシズマブBevacizumab―VEGFモノクローナル抗体
若松 透
1,2
,
伊藤 和幸
1
1大阪府立成人病センター研究所生物学部門
2大阪大学医学部整形外科
pp.240-243
発行日 2012年3月25日
Published Date 2012/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408102285
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はじめに
腫瘍の増殖・進展において,既存の血管から新たな血管が分岐し伸長する血管新生が重要であることは,1世紀以上も前から研究され,腫瘍血管新生を促進させる因子の存在が1939年にIdeら6)により最初に報告された.その後,その因子が血管内皮増殖因子vascular endothelial growth factor(VEGF)であり4),血管新生や血管透過性を制御する重要な糖タンパク質で,リンパ管の形成にも関与していることが明らかにされた14).VEGFは発生期においては血管内皮前駆細胞が分化し新たな血管を形成する血管発生,骨形成にも関与している.さらに,ヒトVEGFに対するモノクローナル抗体であるベバシズマブBevacizumab12)は,進行・再発性大腸癌や進行性乳癌に対して多くの患者に臨床使用され,既に一定の予後改善効果が得られており,有用な分子標的治療薬として注目されている.一方,整形外科が取り扱う骨軟部腫瘍は,既存の化学療法や放射線治療に対し抵抗性であるものが多く,新規治療法が切望されている.今回,われわれが行っている研究結果も併せて,ベバシズマブの骨軟部腫瘍に対する新規治療薬としての可能性について概説する.
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