境界領域/知っておきたい
生体アパタイト配向性による骨質評価
中野 貴由
1
1大阪大学大学院工学研究科マテリアル生産科学専攻
pp.566-572
発行日 2009年6月25日
Published Date 2009/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408101525
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■はじめに
超高齢化社会に突入し,骨粗鬆症や変形性関節症といった老齢化に関連した骨疾患が急増している23).こうした疾患は寝たきりを含むQOLの低下を招くことから,その防止策の検討や治療薬の開発が強く進められている.欠損した骨組織に対する再生医療の展開もその一つである.一方で疾患骨や再生骨の骨折リスクと関連し,骨強度の正確な評価の重要性が高まり,骨質(bone quality)指標の解明が急がれている7,18,19).
“骨質”とは,米国国立衛生研究所(NIH)により提唱された概念であり,“骨密度”以外の骨強度を支配する因子を意味している17).当時,骨質の有力な候補として,海綿骨の骨梁構造に代表される骨微細構造やマイクロクラックの形成・修復,コラーゲンの状態,骨代謝回転,細胞機能などが提案されたが,本質的な骨質制御因子の解明はいまだ十分ではない.
こうした背景に基づき,われわれの研究グループでは,整形外科を中心とした医学系研究者との医工連携に基づく境界領域研究により,材料学的手法を用いた骨組織の質的評価と骨質改善を目指した骨代替材料の設計に取り組んでいる.とりわけ,生体アパタイト(biological apatite,以下BAp)の配向性を骨質指標の有力候補の一つとして注目している.本稿では,BAp配向性の骨質指標としての有効性と配向性を決定,制御するパラメータについて,われわれのグループで見出した成果を中心にご紹介する.
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