最新基礎科学/知っておきたい
椎間板ヘルニア関連遺伝子THBS2
廣瀨 裕一郎
1
,
千葉 一裕
1
,
池川 志郎
2
,
戸山 芳昭
1
1慶應義塾大学医学部整形外科学
2理化学研究所ゲノム医科学研究センター
pp.480-483
発行日 2009年5月25日
Published Date 2009/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408101510
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
■はじめに
腰椎椎間板ヘルニア(以下,椎間板ヘルニア)は,骨・関節疾患の中で最も発症頻度の高い疾患の一つである.本症は,生涯罹患率80%といわれる腰痛の主要な原因の一つで1),かつその好発年齢は20~40歳代の青壮年期であり,労働生産性の低下などの社会的な問題も引き起こす.これまでに椎間板変性の危険因子として,重労働16),喫煙2),スポーツ13)などの後天的要因が数多く報告されてきたが,その厳密な発生機序はいまだに不明である.一方,椎間板ヘルニアには家族集積性の報告3,11,14)があり,その発症には遺伝的素因が関与するとされている.Videmanら17)のビタミンDレセプター遺伝子(VDR)を嚆矢として,すでにいくつかの疾患感受性遺伝子が報告されている.しかし,複数の遺伝子が関与する可能性が高い多因子遺伝病である椎間板ヘルニアには,さらに多くの遺伝子が関与していると考えられており,それらの遺伝子を見つけ出すことが大きな課題となってきた.
本稿では,疾患感受性遺伝子を見つける有力な方法の一つである,遺伝子多型を用いたケース・コントロール相関解析の手法を解説し,われわれが発見したトロンボスポンジン2遺伝子(THBS2)についての研究成果8)と合わせて概説する.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.