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健康寿命延伸のために,「運動器疾患に起因するとじこもり,ねたきりを防ぎ,運動器の障害により要介護になるリスクの高い状態や運動器が障害を受けつつある状態」をlocomotive syndrome(ロコモ)と定義し,介護予防の柱としてその予防,治療への取り組みが提唱されている.同じように介護予防の柱として取り上げられている疾患にmetabolic syndrome(メタボ)がある.近年,メタボは生活習慣を最上流として,内臓脂肪蓄積,脂肪細胞の成熟肥大に伴い,アディポネクチンの分泌低下,TNFα,IL-6,MCP-1,レジスチン,レチノール結合蛋白の増加などのアディポサイトカインの分泌異常が生じ,インスリン抵抗性,炎症,血栓形成,高血圧,耐糖能異常,脂質異常を通じて動脈硬化へと達する病態が解明され,メタボの下流には,心筋梗塞と脳梗塞の発症による死亡と障害化があり,生活習慣がメタボを通じて障害発生に到達する径路が論理的に示された.
先年,診療報酬点数の請求対象として認められた運動器不安定症の疾患概念は,いくつかの疫学データから転倒・骨折が要介護状態の重要な原因疾患であること,「高齢者」,「運動器疾患」,「バランス能力・歩行能力低下」,「転倒リスク」,「とじこもりリスク」の要因間の関連性が明らかになったことから提唱されたものである.しかし,運動器疾患,運動器機能,転倒,寝たきりに関連する因子,それらの因子間の関連性,ことに因果関係は検証されていない.さらに,転倒以外にも運動器機能不全に起因して要介護状態となりうるプロセスがあるはずである.運動器機能不全に起因して要介護状態に至る病態,プロセスの総体を,ロコモ(locomotive syndrome)としてとらえ,そのなかで転倒を介して生活機能の低下に至る運動器不安定症を含め,運動器疾患が運動器機能の低下,生活の活動性低下,要介護状態へと連なっていく過程を論理的に説明するモデルを作成し,検証することが喫緊の課題である.
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