視座
「格差医療」を生まない,生ませない国家政策と国民の意志を
竹嶋 康弘
1
1日本医師会
pp.99-100
発行日 2007年2月25日
Published Date 2007/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408100845
- 有料閲覧
- 文献概要
医療は医学の応用とも言われます.したがって,国民が良質で安全な医療を受け得るためには,言うまでもなく,先端医学の発展とともに限りない医術の進歩が不可欠であります.そしてその秀れた医学,医術の成果をすべての国民が等しく享受できるためにその有効性や安全性が確認された先端医学・医術をわが国が世界に誇る「国民皆保険制度」の中に逐次組み込んでいくことが必要であります.しかしながら,ご承知のように,昨年からの前小泉政権下の財政主導の医療制度関連改革,健保法一部改革は専ら公的給付の削減をのみ図ろうとしたものであり,国民の生命や安心・安全な生活の確保を企図したものではありません.公的給付を抑えるかわりに,保険免責制の導入や,患者負担,個人および世帯負担を増やすことで,厚生労働省が試算した,高齢化や医療技術の進歩に伴う医療費の自然増に対応しようとするものです.私達医療人は,当然ながら国民の中に医療への受療格差を生むものとしてこれに強く反対しています.
政府は経済財政の構造改革こそが日本経済に活力を与え,グローバリゼーションによる国際競争力を高めるとしてこれを推し進めてきました.そしてその結果,このことが,国内において企業間格差,個人の所得格差,地域格差など,かつてない社会の格差を広げ,しかもそれが固定化しつつあることが問題です.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.