視座
知価革命と医療
大井 利夫
1
Toshio OHI
1
1上都賀総合病院
pp.129-130
発行日 2004年2月1日
Published Date 2004/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408100363
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総選挙も終わり,構造改革推進を唱える小泉内閣が政権を継続することになった.政府は既に,平成15年6月27日に「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」を閣議決定している.その中で「国民の安全の確保」を宣言し,「持続可能で効率的な制度を確立することなどにより国民の[安心]を構築することは,政府の責務である」と格調高く謳っている.この決定を受けて,厚生労働省も制度の確立に向けて積極的に取り組むことを表明しているが,具体的対策の立案は今後の検討に委ねられることになる.経済論議は別にして,医療者にとって関心の高いのは医療提供体制を含む医療制度のあり方であろう.目の離せないことも少なくないが,しかし実際には,医療制度は現実の医療の後追いであることが多いように思われる.国民がいかなる医療を求めているか.医療者はそれにどのように呼応しているかが先行し,それを見抜くことが大切だと思う.
アルヴィン・トフラーは,農業革命,産業革命に続くコンピュータや通信技術の発展が「第3の波」を引き起こすことを予言した.知識と知恵の時代である.堺屋太一氏はこれを「知価革命(Knowledge Value Revolution)」と称し,現代は大量化・大型化・高速化の近代工業社会から,多様化・情報化・省資源化の,いわゆる「知価社会」に入っていると指摘している.わが国が,こうしたグローバルな「知価革命」に乗り遅れたことが,1990年以来の経済苦況の根本原因であるという.共感できる点が少なくない.
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