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くる病/骨軟化症(rickets/osteomalacia)は,骨石灰化障害を特徴とする代謝性骨疾患である.このうち小児期に発症し,成長障害や骨変形を主徴とするものを,特にくる病と呼んでいる.一方,骨軟化症では,骨痛や筋力低下が問題となることが多い.くる病/骨軟化症の原因としては,多くのものが知られている(表1).中でも,2つの遺伝性疾患,X染色体優性低リン血症性くる病/骨軟化症(X-linked hypophosphatemic rickets/osteomalacia:XLH)と,常染色体優性低リン血症性くる病/骨軟化症(autosomal dominant hypophosphatemic rickets/osteomalacia:ADHR),および腫瘍随伴症候群の1つである腫瘍性くる病/骨軟化症(tumor-induced rickets/osteomalacia:TIO)は,いずれも腎近位尿細管リン再吸収障害による低リン血症を特徴とする疾患である.また通常低リン血症は,1,25-水酸化ビタミンD[1,25(OH)2D]産生を促進し,血中1,25(OH)2D濃度を上昇させる.しかし,これらの3疾患では血中1,25(OH)2D濃度は正常低値~低値にとどまり,尿細管リン再吸収とともにビタミンD代謝にも異常が存在するものと考えられている.TIOは,主に中胚葉系良性腫瘍に合併する腫瘍随症候群の1つであり,原因腫瘍の摘除により,低リン血症をはじめとする病態は完治する.したがってTIOは,原因腫瘍が産生する液性因子によって惹起されるものと考えられる.XLHやADHR,TIOの病態の類似性は,これらの疾患に共通の発症機構が存在することを示唆しているが,3疾患の発症機序は不明であった.
FGF(fibroblast growth factor)-23は,FGFファミリー最後のメンバーとして同定された液性因子である.FGF-23はまず,FGF-15に対するホモロジーにより,マウスでクローニングされた9).ほぼ同時にFGF-23は,ポジショナルクローニングによりADHRの原因遺伝子としても同定された7).実際にADHR患者には,FGF-23遺伝子の複数のミスセンス変異が報告されている.さらにFGF-23はTIO惹起腫瘍に高発現し,マウスにin vivoで低リン血症,リン利尿などをもたらす因子としても同定された2).
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