臨床外科トピックス がん遺伝子の基礎と臨床・1【新連載】
癌遺伝子の基礎
中西 幸浩
1
,
野口 雅之
1
,
広橋 説雄
1
1国立がんセンター研究所病理部
pp.101-106
発行日 1993年1月20日
Published Date 1993/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407905118
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癌遺伝子,癌抑制遺伝子の種類とその性質
1.癌遺伝子の種類とその性質
癌遺伝子とは,細胞を癌化し,その状態を維持する蛋白質の産生を指令する遺伝子のことである.1969年,レトロウィルスの1つであるRoussarcoma virusの細胞癌化に関する変異株が単離され,癌遺伝子の存在が推定された.その後,1982年,ヒト膀胱癌の培養細胞から膀胱癌の原因遺伝子(H-ras)が単離されて以来,50種類以上の癌遺伝子が単離されている.癌遺伝子は,宿主の動物種に限定されず,ヒトから少なくとも脊椎動物に,さらに,ある種の癌遺伝子では酵母に至るまで広く保存され,細胞の増殖や分化に重要な機能を果たしている.癌遺伝子単離の途上で,既知の癌遺伝子に類似した遺伝子が単離されたことが契機となって,多くの既知の癌遺伝子がそれぞれ高い相同性を示す複数の遺伝子と遺伝子群を形成することがわかってきた.表1に現在までに知られている代表的な癌遺伝子をその機能に基づいて分類した.これらの癌遺伝子は,染色体転座,点突然変異あるいは遺伝子増幅といった機構により活性化する.
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