南極物語
クレバス地帯
大野 義一朗
1
Giichiro OHNO
1
1東葛病院外科
pp.1667
発行日 2001年12月20日
Published Date 2001/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407904732
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やまと山脈周辺は青い氷の平原が広がっていた.内陸から押し出される氷を山脈がせき止め,山が巻く強い風が氷を覆う雪を吹き飛ばし,露出した氷はさらに風で昇華し消えていく.すると氷の中に埋もれていた隕石がそこに残る.隕石は太陽系誕生時の状態をとどめていて,宇宙の進化を探る情報を提供してくれる.これまで世界で発見された隕石約3万個の半分は日本隊が南極で採取したものだ.
朝食後まず吹き溜まりから車両を掘り起こす.総量8kgになる防寒具で全身を包む.雪上車を中心にスノーモービル4台が横にならび終日吹きさらしの氷原を走り回った.氷原にはさざ波がそのまま凍ったような細かな凹凸がある.その中にくっきりとみえる黒い点,隕石だ.46億年間宇宙を漂い,偶然地球へ落下し,数千年も南極の氷のなかにあった,黒い小さな石ころがたどった壮大な時間と空間を思い胸が踊った.
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