南極物語
コジコジの風邪
大野 義一朗
1
Giichiro OHNO
1
1東葛病院外科
pp.1517
発行日 2001年11月20日
Published Date 2001/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407904705
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雪上車はなにもない雪原にまっすぐな轍を後に残して進んでいた.風で削られた雪原は深い起伏となって行く手を阻んだ.雪上車は激しく揺れ,荷物は飛散し,人は車に酔いながら1日中なにかにしがみついていた.エンジンを止めると車内は−20℃まで冷え込んだ.高山病のため横になると肺に空気が入ってこない苦しさを感じた.
「人員車両に異常なし」これが定時交信の決まり文旬だったが,出発してわずか1週間後には「異常」が続出した.燃料フィルターの凍結によるエンスト,ステアリング破損による操舵不能,燃料タンク破損による燃料漏れ…….雪上車4台のうち3台が走行不能になり,1台を放棄しその部品で他の2台を修理した.数日後,今度は起伏に乗り上げた食料ゾリが転覆し,全食料が飛散した.地吹雪の中で埋もれていく食料を拾い集めた.
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