連載 感染症フェローのシンガポール見聞録・3
風邪の鑑別に「デンギィー」
馳 亮太
1
1亀田総合病院感染症科
pp.371
発行日 2012年3月10日
Published Date 2012/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402105857
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外来に発熱患者が受診した場合,シンガポールではデング熱も重要な鑑別疾患の1つです(ちなみに英語では「デンギィー」と発音します).デング熱と聞くと恐ろしい熱帯病のイメージがあるかもしれませんが,熱帯地帯のシンガポールにおいてはとてもありふれた病気です.2010年には,年間約5,400例の発生が報告されており,平均して一日15人ものデング熱患者が発生していることになります.
デング熱は,ネッタイシマカやヒトスジシマカによって媒介されるウイルス性の発熱疾患で,主な症状は,発熱,筋肉痛,関節痛,発疹で,通常は1週間程度で軽快します.デングウイルスには4つの血清型があることがわかっており,罹患した血清型のみに終生免疫ができるので,生涯で最大4回罹患する可能性があります.確定診断にはIgM抗体やPCR検査が用いられ,2~3日で結果が判明します.軽症ですむ症例が多い一方,著しい血小板低下と血管透過性亢進から出血傾向,ショックへと至ることがあり,このようなタイプを重症デング(以前のデング出血熱に相当)と呼びます.
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