南極物語
ペンギンの手術
大野 義一朗
1
Giichiro OHNO
1
1東葛病院外科
pp.413
発行日 2001年3月20日
Published Date 2001/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407904416
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ヘリコプターの行き先は昭和基地から50kmほど南のラングホブデだった.氷で覆われた南極大陸には稀少な露岩域で,大陸移動前の大昔に接していたセイロン同様ガーネットの原石があちこちに転がっていた.直射日光で暖まった岩場では雪が溶けコケが生えていた.動けない植物にとって南極は動物以上に過酷な環境で木草はない.数cm広がるのに百年以上かかるコケの緑はいとおしかった.氷のゆるんだ入り江のあちこちに開水域ができ,ペンギンにとっては好都合なのだろう,岸には数百羽が集まるコロニーがあった.
ペンギンはよたよた歩くが,海中では驚く速さで泳ぎ回り,5分以上潜水ができる鳥だ.その水中行動を生物部門が調査していた.夏はペンギンの産卵育児期で,つがいが2個ずつ卵を産む.親鳥は3〜7日間の交代で片方はひとときも離れず卵や雛を暖め,他方が捕食に行く.生物隊員は捕食に出かけようとするペンギンのなかから元気そうなのを選りすぐって連れてきた.
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