特集 縫合・吻合法のバイブル
Ⅱ.組織別の縫合・吻合法
筋肉,筋膜,腱の縫合
有野 浩司
1
,
冨士川 恭輔
1
Hiroshi ARINO
1
1防衛医科大学校整形外科
pp.45-49
発行日 1998年10月30日
Published Date 1998/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903329
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
筋,筋膜損傷
筋断裂にはカッターなどによる鋭的損傷,挫滅,圧挫を伴う鈍的損傷などの開放性断裂や,スポーツなどによる急激な筋収縮により起こる非開放性皮下断裂がある.最近は腎不全に対する長期間の腎透析例が増加しているので,簡単な外傷で筋断裂を起こす例が増加している.治療の基本として断裂部の間隙がなくなるように肢位を保ち,ある程度の緊張に耐えられるまで修復を要する期間の固定を行う.筋断裂の修復は離開したままでは断裂部の癒合は起こらず,筋力の伝達が著しく減少するばかりでなく遠位部断端の壊死が生じたり,断端部が膨隆し,美容的にも問題が残るので,肢位の保持によっても離開が残存する場合,早期に修復を要する場合には縫合し,縫合部に過緊張がかからないような肢位で外固定をする.これにより,断裂した筋は再び一つのユニットとして修復される1,2).皮下断裂では部分断裂が多く,断裂部の離開は小さく,縫合術の適応となることは少ない.しかし,断裂が広汎で離開が大きく,筋を弛緩させる肢位でも離開が縮小しない場合には縫合術の適応となる.筋が完全断裂か部分断裂かの診断には臨床所見の把握とMRIがきわめて有用である.開放性断裂では,創汚染がある場合は十分な洗浄と挫滅組織のデブリードマンを行う.挫滅が高度な場合はコンパートメント症候群を合併することがあるので注意する.
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.