遺伝子治療の最前線・4
ハンマーヘッド型リボザイムを用いた遺伝子治療
金澤 禎行
1
,
大川 和良
1
,
林 紀夫
1
Yoshiyuki KANAZAWA
1
1大阪大学医学部第1内科
pp.1341-1346
発行日 1997年10月20日
Published Date 1997/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902871
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はじめに
1980年代初めに,Cechら1)あるいはAltmanら2)は,テトラヒメナのグループIイントロンやRNase PのRNA成分が,蛋白質のない状態でRNAに対する切断活性を有するということを発見した.その後,このような触媒活性を持つものは,RNA酵素という概念からリボザイムと名付けられ,次々と新たなものが見出された.例えば,植物ウイルスのサテライトRNAやウイロイドのような植物に感染性のあるRNAの中にも,同様の活性を示す小型のドメインが認められており,これらは,その活性ドメインの形態からハンマーヘッド型リボザイムと呼ばれている(図1).
HaseloffとGerlachは,このハンマーヘッド型リボザイムが,配列特異的にターゲットRNAを切断するのに必要とされる共通の構造を明らかにした3).このことにより,任意のターゲットに対して,特異的に切断活性を有する人工的に改変したリボザイムを作製することが可能となり,遺伝子発現を抑制する方法として注目を集め,多くの研究がなされるようになった.例えば,抗ウイルス剤としてRNAウイルスであるhuman immuno-deficiency virus(HIV)の増殖抑制に応用しようとする試み,あるいは癌遺伝子の発現を特異的に抑制しようとする試みなどに関して多くの報告がなされている4).
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