特集 Q&A 自動吻合器・縫合器の安全,有効な使い方
(Q12)頸部吻合で術後吻合部狭窄とならないための工夫は.
小堀 鷗一郎
1
,
清水 利夫
1
,
田辺 友紀男
1
,
露久保 辰夫
1
,
上村 志伸
1
Oichiro KOBORI
1
1国立国際医療センター外科
pp.1014-1016
発行日 1997年8月20日
Published Date 1997/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902801
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頸部食道胃(結腸)吻合部狭窄の要因は,物理的要因と手術操作に起因するものに分けられる.物理的要因は換言すれば器械吻合による狭窄である.手縫い吻合に比して,器械吻合に吻合部狭窄の発生頻度が高いことは多くの報告に指摘されているが1,2),一方,器械吻合には確実性,縫合不全の防止,手術時間の短縮など,いくつかの利点があることから,多くの施設で日常行われているのが現状であろう.筆者らの施設における食道癌切除例70症例(1993年10月〜1996年12月)のうちの頸部食道胃吻合56例についてみると,42例(75%)に器械吻合が行われているが,手縫い吻合が行われた14症例は,いずれも胃管の挙上性が十分ではなく,頸部創内での器械操作が困難な症例,食道の口径が狭い症例,そして吻合部位が頸部食道高位となる症例に限られている.すなわち,少なくとも自験例については手縫い吻合群にバイアスがかかっており,両群における吻合部狭窄の発生頻度を比較することは意味がなく,また,器械吻合が手縫い吻合に比して吻合部狭窄をきたしやすいとしても,その頻度の差は絶対的なものではないこと,発生した吻合部狭窄に対しては内視鏡的拡張術という有効な治療法が存在することから,症例によって両者を使い分ける方向が望ましいと考える.ただ,21mm径のアンビルは高頻度に吻合部狭窄をきたすところから3),25mm径,可能ならば28mm径を使用すべきである.
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