臨床外科交見室
腹膜は2枚ある?
川満 富裕
1
1獨協医科大学越谷病院小児外科
pp.222
発行日 1997年2月20日
Published Date 1997/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902648
- 有料閲覧
- 文献概要
虫垂切除のときMc Burneyの交錯切開で腹壁を開けると,鈍的に分けた腹横筋の間によく発達した脂肪組織が現われる.これが腹膜前脂肪組織だろうと思いながら腹膜を開けるとその奥に本当の腹膜が現われる.つまり,腹膜がまるで2枚あるように見える.そんな経験はないという方は次の機会に確かめるとよい.腹横筋の背側にある脂肪組織と腹膜との間には,しっかりした膜が必ずある.
腹膜が2枚あるわけはないので,はじめに腹膜と思ったのは実は横筋筋膜だったのだと誰もが考える.解剖書に横筋筋膜は「腹横筋の内面を被う筋膜であるが,広義では腹壁の内面を被うすべての筋膜を総称し,内臓の接する部分以外は腹膜によって内面から被われる(分担解剖学)」と説明されているからである.しかし,この説明や補足説明をよく読むと,狭義の横筋筋膜は腹横筋に密着する固有筋膜であり,狭義の横筋筋膜と腹膜の間には(筋膜はなく)内臓を擁する漿膜下組織(tela Sub-serosa)という結合組織しかないことがわかる.
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.