連載 リレーエッセイ 医療の現場から
一枚の写真
渡辺 正雄
pp.603
発行日 2009年7月1日
Published Date 2009/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101497
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ホスピスの妻の枕元で『風立ちぬ』と『和解』を読んだ.心の準備が出来上がっていなかった私は,ふたりの作家が愛するものの死にどう向き合ったかを改めて考えてみたくなったのである.
半世紀近く前に美しく読んだ節子の物語には,抒情に過ぎて肩すかしを喰った気がしたが,生きようとして尽きた幼子の詳細な描写は心に沁みこんだ.私は,妻が発するどんな信号をも見落とさず聞き漏らすまいと心に決めた.
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