メディカルエッセー 『航跡』・3
アジア小児外科学会(1)
木村 健
1
1アイオワ大学医学部外科
pp.1450-1451
発行日 1996年11月20日
Published Date 1996/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902572
- 有料閲覧
- 文献概要
アジアは,東はニッポン,北はモンゴル,中国,韓国,南はインドネシア,そして西はアフリカとスエズ運河で境されたイスラエルバルカン半島と黒海の出口のボスポラス,ダーダネルス両海峡で境されたトルコの広大な範囲に入る国々によって構成されている.この広大な地域には,人種,宗教,歴史,文化,言語はもちろん,文明の度合いの大きく違う国々が国境を接してひしめき合っている.そうした国を代表する小児外科医が集合してできた学会がアジア小児外科学会である.産みの親,育ての親をつとめて来られた駿河敬次郎,葛西森夫,植田隆先生方のまとめ役としての御苦労は大変なものであったと伺っている.たとえば,会員の定義ひとつをとってみても,当初は個人会員と各国の小児外科学会を併せて会員とするという,無茶苦茶な案が某国グループのゴリ押しによって採択された.そもそも会というものは,責任ある個人の集まりによって成立するものである.個人と団体が入り混って会員をなすのは水と油を混ぜるようなものである.それでも,会が離散せずに存続して来たのは,まさにアジア的であるが,その背後にはアジアの小児外科の発展のためにという貴い信念をもって,勝手気ままな各国のリーダー達をなだめすかし,舵とりをして来られた先達の方々の努力があったからであろう.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.