特集 術前ワークアップマニュアル—入院から手術当日までの患者管理
Ⅳ.術前一般検査—異常値の読みとその対策
肝機能の検査
渡邉 千之
1
,
石山 賢
1
1自衛隊中央病院外科
pp.441-444
発行日 1996年10月30日
Published Date 1996/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902548
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はじめに
肝臓の機能検査は,①肝臓疾患の種類や重症度を診断する,②手術の安全性や術後合併症の危険性を予測する,③肝臓手術で切除範囲を決定する,などを目的として行われる.すでに原疾患が診断され治療方針として手術療法が選択されている患者における術前肝機能検査は,主として生体が手術侵襲に耐えられるか否かを判定するために行われる.しかし,①肝臓は解毒排泄,糖代謝,蛋白合成,エネルギー代謝,網内系免疫能など多くの機能があることから検査値個々の結果はすべての肝機能を代表していない,②健常な肝臓は蛋白合成能で約3倍,ビリルビン処理能で約2倍,尿素合成能では約10倍の予備能を有しているなど検査値に表れるよりも手術侵襲に備える予備能は大きい,③手術の安全性は生体防御能と侵襲との相対関係で評価されなければならない,などの理由でその判定は非常に難しい.
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