特集 術前ワークアップマニュアル—入院から手術当日までの患者管理
Ⅱ.特殊な病態の術前患者管理
6.腎・尿路系
急性腎不全
大竹 喜雄
1
1千葉大学医学部救急部・集中治療部
pp.365-366
発行日 1996年10月30日
Published Date 1996/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902519
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血液浄化法の現状
最近の血液浄化法の進歩は著しく,急性腎不全の術前管理も従来の方法と大きく変わった1).その大きな理由としては,持続的血液浄化法である持続的血液濾過(continuous hemofiltration,CHF),持続的血液濾過透析(continuoushemodiafiltration,CHDF)2)と抗凝固剤3)の発達があげられる.血液浄化法を施行するには抗凝固剤が必須であるが,手術に際しては,術中,術後においては出血が最も重篤な合併症である.したがって,従来は緊急手術において術中,術直後に血液浄化法を施行することなど考えも及ばなかったことである.さらに間欠的血液浄化法に比し持続的血液浄化法は多くの点で有用性は認めるものの長時間にわたって抗凝固剤を用いることもあり,出血性合併症の最も危惧される周術期には施行は困難であった.それを可能にしたのは,蛋白分解阻害剤であり膵炎や播種性血管内凝固(DIC)に対して用いられるnafamostat mesilate(NM)が抗凝固作用があり,血液浄化法の抗凝固剤として用いられるようになったためである.NMの抗凝固剤として優れているのは半減期が5〜8分と適度であるため,体外循環している時には血液が凝固するのを防止し,体内に入ると活性がなくなり出血を助長しない点である.
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