特集 術前ワークアップマニュアル—入院から手術当日までの患者管理
Ⅱ.特殊な病態の術前患者管理
1.循環器系
心不全
田中 寿英
1
1新東京病院循環器内科
pp.310-311
発行日 1996年10月30日
Published Date 1996/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902498
- 有料閲覧
- 文献概要
術前に心不全が疑われた場合,その重症度の評価とともに心不全の原因となっている原疾患,運動能力の程度,手術自体の心循環器系へのリスクを総合して検討する必要がある.原疾患の中で術前に最も問題になるのは虚血性心疾患である.その他に心不全を起こす原疾患として弁膜症,高血圧性心疾患,心筋症,高齢者に不整脈を伴う例などがある.また心不全増悪因子,あるいは術中,術後に間接的に血行動態に影響する要因,貧血,甲状腺機能異常,糖尿,腎機能不全,慢性肺疾患などの精査も必要である.さらに心不全やそれに伴う合併症の治療薬の検討も重要で,特にジギタリス剤は高齢者や腎機能低下例では必ず血中濃度の測定が必要である.抗不整脈剤や抗凝固剤(抗血小板剤)もしばしば心不全時に使用されており,それらの知識と管理が大切である.さらに弁膜症などでは術後の感染性心内膜炎の予防対策も重要である.また術前に術後第2〜4病日に心不全をきたしやすいという知識をもって術後管理の対策を講じる必要がある.
緊急手術例を除いて,術前に心不全があるか既往がある場合,次のようなアプローチが勧められている1).
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.