私の工夫—手術・処置・手順・25
外傷例の膵頭十二指腸切除における膵胃吻合
西田 聖剛
1
,
徳永 正晴
1
,
福留 健一
1
,
赤尾 元一
1
Seigou NISHIDA
1
1下関市立中央病院外科
pp.1310
発行日 1996年10月20日
Published Date 1996/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902427
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外傷性膵十二指腸損傷に対する膵頭十二指腸切除術(PD)の適応と手術手技を紹介する.適応は膵頭部での主膵管の断裂,制御困難な出血,乳頭部の損傷を伴う重篤な膵十二指腸損傷がある.外傷の場合は,血管損傷,大量の血腫,循環不全に加えて,膵が柔らかい事,主膵管の拡張がない事より,手技が難しく危険性も高い.PDの再建法の一つとして膵胃吻合を用いてきたが1),本法は,安全,迅速,簡便であり,とくに外傷に対するPDの際の再建法として推奨される.
次に症例を紹介する.36歳,男性で1992年8月,作業中にトラックの間に上腹部を挟まれショック状態で当院へ搬送された.著明な貧血と腹部に激しい筋性防御を認めた.腹部単純X線撮影にて遊離ガス,CTにて膵頭部後腹膜へ血腫,出血,十二指腸の破裂を認めた(図1).開腹すると腹腔内には膵頭部より活動性の出血を認め,後腹膜へ大量の血腫を形成し,十二指腸は圧挫により多発性に穿孔挫滅していた.膵を授動し検索を進めると膵頭部は激しく挫滅しており,門脈前面で完全に断裂していた.主膵管は同定困難であった.臓器損傷の程度より膵頭十二指腸切除,膵胃吻合を選択した.膵胃吻合の手順を述べる.膵断端を後腹膜より5cm遊離し胃後壁に長軸と直角に1.5cmの膵断端よりやや小さ目の穴を電気メスで開ける.3-0ポリプロピレン両端針25mmを用いて膵は主膵管に注意し十分に深く,胃は全層に確実に懸ける.
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