臨床外科交見室
イラストレイテッドセミナー「腹会陰式直腸切除術」の内容に対する異議
太田 博俊
1
,
高橋 孝
1
1癌研究会附属病院消化器外科
pp.480-481
発行日 1996年4月20日
Published Date 1996/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902267
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貴誌50巻7号の「イラストレイテッドセミナー」に記載された直腸癌に対する腹会陰式直腸切断術の手術術式は,長年,日本の外科の先達が築き上げてきた手術手技に逆行する手法を紹介しています.すなわち,直腸後面の剥離において,仙骨前面を用手的に剥離することは適切な剥離層を維持できず,厳に慎まなければならない手法です(p933の図8,p934の図9).このような剥離では,固有直腸筋膜(臓側骨盤内筋膜)を十分に切除側につけることはできません.著者のいうように,「気持ち良く」手を入れている間にEW(+)にもなりかねません.
欧米の教科書では,いまだこのような用手的剥離を推奨していますが,それに対する批判はすでに各国でみられます.日本では,1970年代から用手的剥離に代わって「直視下鋭的剥離」が一般化し,その効果としての低い局所再発率が国際的にも認められています1).
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