特集 外科患者・薬物療法マニュアル
Ⅰ.救急患者のプライマリ・ケアにおける薬物療法
1.心肺蘇生
豊岡 秀訓
1
1東京医科歯科大学医学部麻酔・蘇生学
pp.10-11
発行日 1992年10月30日
Published Date 1992/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900917
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心肺蘇生(CPR)のとりあえずの目標点は,脳組織の損傷の予防と安定した自己心拍の確立である.このためには人工呼吸と心圧迫法(人工循環)を併用して,①酸素化された動脈皿と十分な灌流圧により脳および冠循環を維持すること,および,②可及的すみやかに自己循環を再開することが必須である.人工循環,特に体外式心圧迫法では,一般に重要臓器の生存に必要な十分な灌流圧を得ることはまず不可能であるので,実際には自己循環をいかに早期に得るかが勝負どころとなる.カテコラミンを主とする薬物療法の最大の狙いは,この人工循環中の冠の有効灌流圧を上昇させることにより嫌気的代謝の進行した心筋組織の酸素化をはかり,必要な場合には他の手段(電気的除細動など)を併用しつつ自己心拍の再開にこぎつけることにある.この他,心肺蘇生における薬物療法は,組織の酸塩基平衡の是正,再開した自己循環の安定化,循環血液量の是正など,CPRの成否をにぎる大きな役割を担っている.
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