特集 保存的治療の適応と限界—外科から,内科から
食道アカラシア
内科から
杉村 文昭
1
,
松尾 裕
1
1日本大学医学部第3内科
pp.1328-1331
発行日 1990年10月30日
Published Date 1990/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900212
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本症は,器質的にはなんらの狭窄原因がみられないのに,食道の正常な推進的蠕動運動と噴門の哆開現象の欠如により,食道下部から噴門部の頑固で持続的な機能的通過障害と口側食道の高度の拡張を来す,神経筋疾患の一種である.病理学的所見としては,Rakeによって初めて記載された下部食道筋層内Auerbach神経叢の神経節細胞の変性ないし消失が一般的に認められているが,それらがどうして起こるのかという病因の本質については,1672年Willisによって本疾患が最初に報告されて以来,今日なお不明である1〜3).
男女比はほぼ同率であり,比較的若年者に多くみられ,徐々に発症し,経過は長い4).嚥下障害の程度が日によって異なり,液体より固型物のほうが通りやすい傾向があり,冷たいものより温かいもののほうが通りが良い.夜間就寝後に嘔吐が起こりやすい.胸骨後部痛もみられる.嚥下困難が長期間持続するにもかかわらず割合に栄養状態がよく,体重減少も軽いのが特徴的である2,5).
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