- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
放射線の再照射
近年,放射線治療の進歩は目覚ましく,X線による強度変調放射線治療(intensity modulated radiation therapy:IMRT)や体幹部定位放射線治療(stereotactic body radio therapy:SBRT)などの高精度放射線治療の発展や,陽子線治療・重粒子線治療などの粒子線治療の発展といった照射技術の向上に限らず,化学放射線療法や周術期補助療法としての放射線治療法の確立などにより,様々な病態に対して放射線治療が行われている.2019年の日本放射線腫瘍学会の定期構造調査によれば,放射線治療を受ける症例は年間28.3万人にものぼる1).放射線治療は目的に応じて,腫瘍に対する根治的な照射,主治療の補助目的の照射,症状緩和目的の照射などに分かれるが,線量や照射法,照射範囲などもそれぞれ違いがある.一方で,根治的な放射線治療後や補助的な放射線治療後を行ったのちに再発することも一定の割合では存在するが,それらに対して再度放射線治療を行うことは一般的に困難である.多くの疾患ガイドラインでは放射線治療後の再発に対する治療について特別な記載こそないものの,例えば子宮頸癌治療ガイドライン2022年版のCQ28では照射野内再発に対して推奨される治療として化学療法,外科治療もしくはbest supportive careが挙げられており,再度の放射線治療は推奨されていない2).
放射線治療の既往がある症例に対して,同部位への再度の放射線治療が推奨されない理由はおもに2つあり,①周囲臓器の耐容線量の観点,②腫瘍の放射線抵抗性の観点が挙げられる.初回の放射線治療では,腫瘍のみではなく周囲の臓器にもある一定の線量が照射されている.それぞれの臓器には耐容線量(放射線による合併症の発生確率が臨床的に許容される程度に低くなる最大の放射線量)があることが知られているが,2回の放射線治療を行うとその耐容線量を上回り重篤な有害事象を生じることが懸念されることから,安全性を担保しつつ腫瘍に十分な線量を照射することが技術的に困難である点が挙げられる.
Copyright © 2024, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.