書評
—本田五郎(編) 大目祐介,本田五郎(執筆)—坂の上のラパ肝・胆・膵[Web動画付]—腹腔鏡下手術が拓く肝胆膵外科のNEWスタンダード
坂井 義治
1
1大阪赤十字病院
pp.919
発行日 2024年8月20日
Published Date 2024/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407214616
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題中の「坂の上」とは一体どういう意味なのか? この本を手にした時に,本田五郎先生が愛読していた司馬遼太郎の著書の一つ『坂の上の雲』を想った.秋山好古・真之が明治維新に陸軍騎兵部隊の創設や理論的な海戦術を考案したように,豊富なラパロ消化管手術の経験の基にラパロ肝・胆・膵手術に取り組み,その標準手技を確立した自らの体験を重ねたのだろうと推測したからである.この本の序文を読むと,私の推測は間違っていたようである.「坂の上」とは,本田先生がこれまで,そして今勤務している病院(都立駒込,新東京,東京女子医大)が坂の上にあるからだという.しかし,これまで本田先生の臨床医としての経歴を見てきた一人として,彼の医学・医療への取り組みは,秋山兄弟同様に,現場での鋭い観察力と理論的考察力,そして篤い持続力という共通点を感じざるを得ない.
鋭い現場での観察力の一端は胆囊摘出術における“SS-I層での剝離”の解説に見ることができる.最も安全な剝離層はどこにあるのか,その層は剝離中にどのように認識できるのか,病理組織ではどこに相当するのか,など深い観察力による既存の用語への疑問と挑戦,そして理論的な新たな概念の提唱は,まさに“ホンダイズム”である.CVSへの疑義など圧巻である.“Knack”“Pitfall”“Discussion”を通してホンダイズムの醍醐味を味わっていただきたい.
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