FOCUS
cadaver trainingを国内で普及させるために—クリニカルアナトミーラボの導入
鈴木 崇根
1
Takane SUZUKI
1
1千葉大学大学院医学研究院環境生命医学
pp.71-81
発行日 2018年1月20日
Published Date 2018/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407211911
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はじめに
医師,とりわけ外科医にとって,手術や検査手技の上達はプロフェッショナルとして重要である.技術が未熟な場合や解剖学的知識が不十分な状態で手術・検査を行うことは,医療安全面からみても可能な限り避けるべきであろう.にもかかわらず,これらの手技の習得方法は依然として実際に患者から学ぶon the job training(OJT)が主体である.近年,OJTに対して実際の業務から離れて教育するoff the job training(Off-JT)の考え方が欧米では導入されており,成果を上げている.Off-JTでは,実際に患者を治療する前に①模型,②動物,③遺体を使い,器械の使い方から手技に即した解剖まで学ぶことが可能である.施設間で手術症例の偏りは現実に存在するうえ,適応の少ない術式においてはベテランの外科医でも経験は少なくなる.しかし外科医を続けていく以上,経験が少ない術式でも完璧に手術を遂行することを要求されてしまう.OJTのみでは,このギャップを埋めて医療安全を担保することは難しく,その解決のためOff-JTが重要視されはじめている.この3つの方法のなかで,諸外国に比べてわが国では遺体(cadaver)を使った手技教育が普及していない.その原因は,医師が遺体を解剖できる施設がないことに尽きる.
本稿では千葉大学でcadaver laboratory(cadaver lab)として「クリニカルアナトミーラボ(CAL)」を立ち上げた経験から現状と課題を述べ,普及への契機となればと考えている.
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