書評
—日本Acute Care Surgery学会/日本外傷学会(監訳)—DSTC外傷外科手術マニュアル[Web動画付]
横田 順一朗
1
1堺市立病院機構
pp.218
発行日 2017年2月20日
Published Date 2017/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407211522
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今,止血できなければ死につながる.重度外傷の緊急手術ではこのようなシリアスな状況に遭遇する.熟練した外科医でも,経験したことのない状況や見たことのない術野にたじろぐことがある.専門領域でなくても,救命のためには迅速な止血など外科的介入により,蘇生しなければならない.重度外傷と対峙する外科医にはこれを乗り切る技量と意思決定が求められる.予定手術では事前に手術アプローチ,術式の選択および術後管理まで予習できるが,救急現場では不可能である.遭遇する機会が少ない上に,守備範囲が広く,予定手術とは異なった判断が必要となる.症例を重ね,経験を積むといった修練の難しい領域である.このため臨床経験を補完する手段としてシミュレーション教育が脚光を浴びている.
ここに紹介する『DSTC外傷外科手術マニュアル』は,重度外傷に対する外科的技能をウエットラボで修練するDSTCコースのために書かかれた図書である.DSTCコースは,世界的にトップクラスの外傷外科医が直接指導する実践さながらの修練システムである.本書は,コース受講の教材といった程度のものではなく,まさしく重度外傷治療のテキストとして充実した内容が詰まっている.外傷診療に長けた外科医の技能と意思決定が凝縮されているといっても過言ではない.また,Webを介して実践さながらの手術動画を閲覧することができ,コースの受講に至らずとも,本書の熟読と動画の視聴とでかなりの学習効果が期待できる.翻訳をされた先生方の意図が,実はこの点にあるのではないかと推測する.
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