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はじめに
近年のCTLA-4やPD-1/PD-L1などの免疫チェックポイント(immune-checkpoint)分子に対する阻害抗体治療,メラノーマに対する腫瘍浸潤リンパ球(TIL)や,CD19に対するキメラ型抗原受容体(chimeric antigen receptor)遺伝子導入T細胞(CAR-T細胞)を用いた細胞移入治療の大きな成功を受けて,米国のScience誌がBreakthrough of the Year 2013に「がん免疫治療」を選んでからすでに2年が経過した1).腫瘍免疫学者のみならず,化学療法一辺倒だった臨床腫瘍医までが,がん治療にがん免疫治療が必要不可欠になった,と言う時代を迎えた.生体がもつ免疫の働きを積極的にがん治療に結びつけようとする試みが,がん免疫治療であり,従来「がんワクチン治療」と「細胞移入治療」に大別されてきた.さらに,近年「免疫チェックポイント阻害薬治療」が加わった(図1).がん細胞と戦うエフェクター細胞を体内に誘導する治療が「がんワクチン治療」であり,すでに体内に存在するエフェクター細胞を一度体外で培養して活性化させ,数を増やしてから再び体内に戻す治療が「細胞移入治療」である.いずれも最終的にがん細胞に存在する標的分子を認識し攻撃して破壊するエフェクターとなるのは,細胞傷害性T細胞(CTL)などの細胞性免疫応答に関する細胞である.抗CTLA-4抗体や抗PD-1抗体に代表される免疫チェックポイント阻害薬は,抗体治療薬ではあるがその作用機序は抑制されていた抗腫瘍免疫応答の再活性化であり,すなわち細胞性免疫応答の増強である2).免疫チェックポイント阻害薬の治療を受けた患者や,腫瘍浸潤リンパ球(TIL)治療,キメラ型受容体(CAR)遺伝子導入T細胞治療を受けた患者では,効果が得られた患者では長期間その効果が持続することが観察されている.強力でかつ持続する点が免疫の特徴である.がんに対する免疫応答の機序が少しずつ解明され,がん免疫治療が本格的に臨床応用される時代を迎えた.
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