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最新の腹腔鏡下胃癌手術の中でハイライトと言える“体腔内再建法”をテーマにした本書は,医学書院の雑誌『臨床外科』の連載を土台にして永井英司先生が企画編集されたものですが,わが国におけるこの分野の達人と評価の高い先生方がそれぞれ得意とする領域で,その技量を付属するビデオも通して,わかりやすく,また,画像的にも美しく表現されています.外科学の中で,日進月歩の医用工学に最も影響され,進化しているのが内視鏡外科学と思われますが,それぞれの達人により無血の術野で展開される新器材を利用したエキスパート手技が,これも画期的進化の只中の鮮明な映像で美しく表現されています.
1991年に始まった腹腔鏡下胃癌手術の過去25年間の普及は目覚しいもので,年間の手術症例数は3〜4年前まで回帰関数的な増加を示してきました.わが国において,11万〜12万人の年間胃癌罹患患者に対して(http://ganjoho.jp/public/index.html),National Clinical Database(NCD)や厚生労働省データベースによると,2011年から直近の2014年にかけて1年間に51,000〜55,000人に胃癌切除再建術式が行われており,そのうちの約30%の症例に腹腔鏡手術が行われるようになってきています.その実施率が腹腔鏡下大腸癌手術の場合よりも低いことについては,エビデンスが乏しいことから最新の胃癌治療ガイドライン(2014年)においても限られた範囲の推奨であることが大きく影響していると思われますが,進行胃癌を対象にした第Ⅲ相比較臨床試験が現在,複数進行していることから考えて,腹腔鏡手術が近い将来にはさらに重要な地位を占めるようになると予想されます.
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