増刊号 消化器・一般外科手術のPearls&Tips—ワンランク上の手術を達成する技と知恵
⑦肝切除術
腹腔鏡下肝葉切除,区域切除(外側区域切除以外)
中村 和徳
1
,
峯田 章
1
,
坂本 承
1
,
水谷 知央
1
,
若林 剛
1
Kazunori NAKAMURA
1
1上尾中央総合病院外科
pp.178-184
発行日 2015年10月22日
Published Date 2015/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210951
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腹腔鏡下肝切除術(部分切除,外側区域切除)は,2010年の保険収載を契機に,徐々に普及してきている.2014年10月に岩手県盛岡市で開催された第2回腹腔鏡下肝切除術国際コンセンサス会議では,腹腔鏡下肝切除(部分切除と外側区域切除:minor hepatectomy)は標準治療の1つとされ,術後合併症や入院期間は開腹肝切除術よりも優れるなど,腹腔鏡下肝切除の現状と今後の方向性が示された1).一方,昨今のマスコミ報道によると,無理な適応拡大が不幸な結果に繋がる可能性もあり,手技の習得にあわせ段階的で慎重な適応拡大が必須と思われる.本稿で扱う腹腔鏡下肝切除(区域切除や肝葉切除:major hepatectomy)は現時点で保険未収載であり,倫理委員会での承認や肝臓内視鏡外科研究会によるオンライン症例登録の重要性を強調したい2).
また,最初に知っておきたいこととして,腹腔鏡下肝切除の利点3)には,尾側からアプローチできること(図1),流入血管の遮断と気腹圧による肝静脈系出血の軽減により,無血術野で肝離断ができることなどがある(図2).肝臓外科の基本は,肝内の脈管を確実に露出して処理することであり,無血術野が望ましい.また腹腔鏡下肝切除では,体位により肝静脈圧を下げ,出血を軽減することもできる(図3).したがって,ワンランク上の腹腔鏡下肝切除をマスターすれば,より質の高い肝切除を行えるようになる.本稿に記載された術式が広く安全に行われるようになり,患者に優しい腹腔鏡下肝切除が肝切除の主流になることを願っている.
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