書評
—日野原重明(監修) 山内英子,松岡順治(編)—実践 がんサバイバーシップ—患者の人生を共に考えるがん医療をめざして
堀田 知光
1
1国立がん研究センター
pp.557
発行日 2015年5月20日
Published Date 2015/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210739
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
わが国でも「がんサバイバーシップ」という概念がようやく普及し始めている.がんサバイバーシップとは「がん経験者がその家族や仲間とともに充実した社会生活を送ることを重視した考え方」を意味している.かつて,がんは不治の病として長期の入院などにより患者は社会から切り離されてきた.しかし,今では早期発見や治療法の進歩などにより生存期間が延長し,多くのがんは長くつきあう慢性疾患として,がんと共に暮らすことが普通の時代になりつつある.
がん体験者は患者であると同時に生活者であり,社会人でもある.2012年に閣議決定された第2期がん対策推進基本計画では,「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」が全体目標の一つに加えられた.今日,がんは日本人の死亡原因の第1位で年間に約36万人ががんで死亡しているが,一方で,直近のデータでは2014年に約81万人が新たにがんに罹患すると推計されている.したがって年間に約40万人以上のがん経験者が増える計算になる.就労を含めたサバイバーシップの充実は大きな政策課題といえる.
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.