特集 —そこが知りたい—消化器外科手術のテクニックとコツ96
食道
後縦隔経路による再建臓器の挙上
阿保 七三郎
1
Namio ABO
1
1秋田大学医学部第2外科
pp.724-726
発行日 1988年5月30日
Published Date 1988/5/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210007
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
胸部食道癌に対して私は①右開胸操作によって胸部食道を主病巣を含め完全に剥離し,リンパ節郭清は気管分岐部以下では徹底的に行うが,上部縦隔内リンパ節郭清は迷走神経主幹を損傷しない程度にとどめ,極力開胸時間の短縮を意図している.②病巣切除と郭清にあたっては,特に両側迷走神経およびその肺門枝の温存に留意する.③食道胃吻合は右頸部で2層吻合により実施するが,食道吻合部は最終的に上部後縦隔胸膜の再縫合閉鎖部に一致することになる.④胸部食道(亜)全摘を実施している.⑤胃周囲リンパ節郭清は十分に行い,噴門部はもちろん必要に応じては胃底部や胃小彎部も合併切除する,などを手術の要点としている.これらの治療指針のうち①②によって術後肺合併症は激減し,③の操作によって致命的縫合不全例は皆無となり,④,⑤と共に私が初めて導入した術後頸胸部T字照射療法を実施することによって,胸部食道癌の治療成績は往年に比べ著しく改善したのは事実である.
Copyright © 1988, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.