特集 —そこが知りたい—消化器外科手術のテクニックとコツ96
食道
反回神経温存
鶴丸 昌彦
1
Masahiko TSURUMARU
1
1虎の門病院消化器外科
pp.722-723
発行日 1988年5月30日
Published Date 1988/5/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210006
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反回神経は迷走神経からの分枝で食道側壁を密着して走行し喉頭に入って声帯運動を司る神経で,その損傷は食道との位置的関係から食道外科の術中合併症として最も重要なものの一つである.片側の麻痺では嗄声はもとより術後の喀痰力の低下や誤嚥による肺合併症が生じやすい.両側麻痺では更に気道閉塞の危険が加わる.
反回神経は左右でその走行に差があり,右側は右鎖骨下動脈の起始部で右迷走神経から分岐し,動脈の前から後を回って頭側へ走行し,左側に比べて食道よりやや離れている.左側は左迷走神経から分岐して大動脈弓を回って上行し,しばらく食道から離れて上行するが頸部に近づくにつれ食道と気管に密着し気管食道溝を上行する.上縦隔の郭清では左反回神経の走行が長く,かつたるみがみられるため左側の麻痺の頻度が高い.しかし術中反回神経をよく確認し,愛護的に扱えばその損傷は十分避けうるものである.
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