Caseに学ぶ 一般外科医のための血管外科応用手技・5
下大静脈処理を必要とする後腹膜腫瘍の手術
安田 慶秀
1
,
田辺 達三
1
1北海道大学医学部第2外科
pp.1693-1697
発行日 1987年10月20日
Published Date 1987/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407209846
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手術に必要な局所解剖
下大静脈は下半身の血液を集め,右心房に流入する静脈幹であり全身で最も太い血管である.下大静脈に流入する主な枝は腰静脈,精巣(卵巣)静脈,腎静脈,肝静脈等である.下大静脈が閉塞されると前腹壁の静脈,奇静脈系,椎骨静脈叢が上大静脈との副側路となる.臨床的な立場,あるいは外科治療上の観点からは下大静脈はつぎの3つのセグメントに分けると便利である.セグメント1は腎静脈下の下位下大静脈,セグメント2は左右腎静脈と肝後面下大静脈を含む中位下大静脈,セグメント3は肝静脈起始部から右心房へ至る肝上部下大静脈である.セグメント1ではその遮断にあたつて特別な補助手段は必要でなく永久遮断も可能である.セグメント2は腎腫瘍始め種々の後腹膜腫瘍に浸潤されやすい場所であり実際臨床上処置を要することが多い.セグメント3に限局している腫瘍は少なくこの部まで波及した腫瘍は進行性の症例が多い.
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