My Operation—私のノウ・ハウ
内鼠径ヘルニア根治手術
大谷 五良
1
1三井記念病院外科
pp.1689-1692
発行日 1986年11月20日
Published Date 1986/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407209578
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適応と手術
内鼠径ヘルニアはほとんどの症例が40歳以上で,成人〜高齢者に発生するが,保存的治療法では治ることがないから,全例が原則的に手術適応である.但し社会的な適応の面ではいくつか考慮されるべき点があり,ねたきりの老人,ほとんど自力で歩行できない症例などは当然手術適応からはずれる.また重症な疾患を合併している場合も同じであるが,例えば心臓弁膜症などが手術によって治り,心不全が消失すれば改めて手術適応となる.年齢のみで手術適応からはずすことはない.自力で食事,洗面,排便,歩行など日常の生活ができ,また自ら病気を治す意思をもつていれば80歳でも90歳でも手術適応となる.
内鼠径ヘルニアは従来我国では極めて稀とされていたので,60歳以上の一般外科医の中では,内鼠径ヘルニアの手術を経験したものは比較的少ない.しかし最近7年6カ月の三井記念病院外科における40歳以上の鼠径ヘルニア402例についてみると,内鼠径ヘルニアは内外合併型を含め27.8%にも達している.したがつて決して稀にしか遭遇しない症例でないので,再発の少ない安全な手術法を心得ておく必要がある.
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