原典を繙く・11
Mirizzi症候群(その1)—Diagnostic Des Obstructions Incomplètes Non Calculeuses Du cholédoque. Leur traitement par la cystico-duodénostomie
石川 功
1
1社会保険群馬中央総合病院外科
pp.61-63
発行日 1986年1月20日
Published Date 1986/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407209226
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Mirizzi症候群という疾患名は,胆嚢頸部ないし胆嚢管に嵌頓した結石とその周囲に波及した炎症性瘢痕とがあいまつて,肝管—総胆管の不完全閉塞をきたす病態を,Mirizziが"解剖・機能的障害"による一つの症候群として報告したことに由来する.
しかし,このMirizzi症候群の原典に関しては,諸家により引用文献に若干の混乱が認められる.これは,Mirizziが1930年代にはフランス語,ドイツ語および自国語(スペイン語)で,その後1940年代になつて英語を含めて,内容の類似した論文や学会報告を多数(10編以上)繰り返し発表していることが原因の一端と考えられる.本欄では,1936年のLa Presse Medicale(8:150-154)に上記の「非結石性総胆管不完全閉塞の診断—胆嚢管・十二指腸吻合術による治療」という標題のもとに発表されたフランス語の論文を原典の一つとして選んだ.その理由は,本論文が,この中ではMirizzi自身まだ"Syndrome"という用語は使つていないが,"主胆管の解剖・機能的障害,des troubles anatomo-fonctionnels de la voie biliaire principale"という表現を明確に示した最も初期の原著と考えられたからである.この原著の全訳を通して,Mirizziが後年前述したclinical entityを確立する基礎となつた背景を理解していただけたなら,存外の幸せである.
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