My Operation—私のノウ・ハウ・【新連載】
バセドウ病に対する甲状腺亜全摘術
伊藤 國彦
1
1伊藤病院
pp.509-513
発行日 1985年4月20日
Published Date 1985/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208984
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
適応と手術
バセドウ病に対する治療法には抗甲状腺剤治療,131Iによるアイソトープ治療,外科的治療の三者がある.これらはいずれも甲状腺機能亢進の改善に有効な治療法である.しかし三者三様に問題点がある.すなわち抗甲状腺剤治療では寛解率が低いこと,アイソトープ治療では甲状腺機能低下症に陥る症例が多いこと,外科的治療は寛解率はもつとも優れているが,手術後遺症があり得ることや手術瘢痕を残すことなどである.個々の症例に対していかなる治療法をえらぶかは,診療に当たる医師の考え方によつて異なるが,それぞれの患者が有している社会的背景を考慮して治療方法を選ぶべきである.著者が現在外科的治療の適応としている症例は若年者で甲状腺腫が大きく,抗甲状腺剤でなかなか寛解が得られない症例や抗甲状腺剤の副作用のある症例で,将来妊娠の可能性のあるもの,あるいは早期に確実な寛解を期待する症例などである.著者の方針としては手術の適応は厳密に選んでいるので,近年手術を施行する症例は全バセドウ病の約15%である.
バセドウ病の手術は,抗甲状腺剤により甲状腺機能を正常化した上で施行することが必須条件である.しかし抗甲状腺剤が副作用のために使用できない場合は,ヨード,β-Blocker,副腎皮質ホルモン等で前処置の後施行する.
Copyright © 1985, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.