原典を繙く・2
Dieulafoy潰瘍(その2)—Exulceratio simplex L'intervention chirurgicale dans les hématémèses foudroyantes consécutives à l'exulcération simple de l'estomac.
島津 久明
1
1東京大学医学部第1外科
pp.89-91
発行日 1985年1月20日
Published Date 1985/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208914
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その機会は訪れました.状況は以下のとおりであります.1897年10月7日午後11時,22歳の青年が旺盛な食欲で夕食を摂つたのち,おとなしく家路につきました.Ecoles通りとMontagne-Sainte-Genevière通りの角まできたとき,彼は突然不快感と悪心に襲われ,その直後に口一杯の多量の血液を吐出しました.「歩道の上が血の海になりましたので,おそらく,1,2lの血を吐いたと思います」と彼は私たちに申しました.この男は弱りきつた状態で帰宅して,そのまま床につき,夜はよく眠つております.翌朝,起きて出かけ,《体力をつけるために》,食事をたつぷり作り,かなりの肉を食べています.昼間はとくに変つたことは起こつておりませんが,つぎの夜の2時頃,彼は再び前々日の夕方と同じような血液の嘔吐に見舞われました.血液は褐色がかり,液状の部分と凝血塊が混つていたとのことでした.その翌日とその後数日間,この青年は特別の胃症状,疼痛,嘔吐などを全く経験することなく過しておりますが,彼は極度に衰弱して全く仕事をすることができなくなりましたので,《元気を取りもどすために》,血のしたたるような牛肉を食べ,ブドウ酒を飲み続けています.
症状が次第に悪くなると感じて,彼は10月13日水曜日の夕方,Hôtel-Dieu病院にきております.翌朝,この患者をみましたとき,私は皮膚の粘膜が全く色を失つているのに驚きました.
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