原典を繙く・3
Dieulafoy潰瘍(その3)—Exulceratio simplex L'intervention chirurgicale dans les hématémèses foudroyantes consécutives à l'exulcération simple de l'estomac.
島津 久明
1
1東京大学医学部第1外科
pp.249-251
発行日 1985年2月20日
Published Date 1985/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208942
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ここに,やはりほとんど雷の襲来を思わせるような激しい吐血を伴う胃の単純な表在性潰瘍を呈した第3の症例がございますが,これはMichaux博士の大変なご好意によるものであります.23歳の若い女性が昨年の10月25日,Broussais病院の第40,Broca病棟に入院しております.彼女は生来健康で,胃の痛みや嘔吐などを全く知りませんでしたが,暫らく前から彼女自身が胃痙攣と呼ぶ症状に見舞われるようになりました.10月20日,この日彼女は気分がすぐれなかつたのですが,共同洗濯場へ洗い物をするために家を出ております.その直後に彼女は気が遠くなる感じとめまいに襲われました.彼女は家へとつて返えしておりますが,数分後におよそ2lと見積られる大量の血液を吐出致しました.
吐血に続いて下血も起こりました.エルゴチン,氷,牛乳食が処方され,絶対安静が指示されました.しかし,10月22日の夜と10月23日の昼間に再び吐血と下血が起こり,この女性は10月25日に入院しております.あまりに大量の血液が失われたために,彼女の皮膚や粘膜は全く色を失い,脈拍数は130,体温は39°と上昇しております.300gの血漿の皮下注,エルゴチンの投与,氷嚢による冷罨法などの処置にも拘らず,新たな吐血が反覆して起こりました.危険が切迫しているのをみて,Michaux博士はこの胃出血が胃の単純性潰瘍によるものであると確信し,手術をすることを決心しております.
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