原典を繙く・4
Dieulafoy潰瘍(その4)—Exulceratio simplex L'intervention chirurgicale dans les hématémèses foudroyantes consécutives à l'exulcération simple de l'estomac.
島津 久明
1
1東京大学医学部第1外科
pp.387-389
発行日 1985年3月20日
Published Date 1985/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208964
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若干の状況の違いはありますが,以上の7例はいずれも全く類似したものであり,とくに潰瘍病変はきわめて表在性で,出血はきわめて激烈であります.その臨床像や治療についてお話するまえに,まず潰瘍病変の病理解剖を明らかにすることから始めたいと思います.私が今,検討の対象としております胃のこの潰瘍病変は概して円形でありますが,楕円形であることも少なくありません.そして,50サンチーム硬貨大(自験第2例),2フラン硬貨大(Michaux博士の症例),5フラン硬貨大(自験第1例)などの面積をもつように,しばしばかなりの大きな拡がりをもっております.この表在性潰瘍病変は,それよりも小さい多数の病変が集合して生じたようにみえることもあります(Luys博士の症例).しかし,少なくとも外観上,しばしばきわめて多数にのぼる点状のこれらの小びらんは,Balzer博士,さらにその後Pillet博士によって詳細に検討された出血性びらんとは異なるものであります.この潰瘍性病変は胃粘膜の限局した1カ所に生じます.粘膜欠損は表層部分に限られ,辺縁が隆起したり,不規則になったりすることはありません.鋭利に切り落されたように生じ,周囲は健常粘膜で囲まれています,病変は粘膜面とほとんど段差がなく,きわめて表在性であるために,生体でも剖検時にも,注意深く観察しないと,はなはだ簡単に見過ごされてしまうほどであります.
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