histoire de la chirurgie 外科史外伝—ルネッサンスから"外科の夜明け"まで・9
下半身の外科の進歩
大村 敏郎
1
1川崎市立井田病院手術室
pp.1549-1552
発行日 1982年10月20日
Published Date 1982/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208156
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□診断と手術適応
前回,気管切開・甲状腺・乳腺の外科をとりあげて,19世紀前半の外科技術を検討してみた.
この時代,診断という点からすれば,特殊な検査法があるわけではないから,視診上の異常や触診でふれる硬結・腫瘤といつたものが問題にされたのであつた.手術適応ということになると,外傷・化膿創を別にすれば,創の感染による予後の悪さが,適応の範囲を拡げさせなかつたし,決断にはかなりの勇気が要つたのである.したがつて平和な街の中でよりも,戦場のようなのつぴきならぬ環境の方が思いきつたことが出来たのである.戦争が外科に貢献したのは,外傷の患者を増した以外に,適応の範囲を拡げるという実験外科的な点もあつたのである.
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