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はじめに
器械吻合は過去20年以上にわたり,ソ連において広く行なわれてきたが1),米国における臨床応用は近年に至るまで行なわれなかつた.1959年,Ravitch2,3)がソ連製吻合器を駆使し,実験的,臨床的成績について報告して以来,米国のUnited States Surgical Corporationにおいて,数種類の改良型吻合器が作成された.それ以後,多くの吻合器が発展し,とくにTA型およびGIA型などであり,これらは直線の縫合で二重の千鳥型ペッツによる外翻吻合であつた.しかしこれらの吻合器械による縫合には,その適応の上で限界があつたために,近年に至り円周状の,内翻吻合を主体としたEEA吻合器が発表された.この吻合器械はソ連製RKS吻合器の改良型であつた.本邦においても中山らにより改良が行なわれ,腸管内挿入を容易にし,体軸に沿つて使用を容易にした彎曲軸型の吻合器械が発表され,種々の施設で好成績が発表された(図1).これらの吻合器械はEEA型を含めて,吻合に際し組織の圧挫からはじまり,次にハンドルの操作により縫合と組織の切離が同時に行なわれる.円周状のドーナツ型の組織の存在により縫合の終了が確認される.ソ連製RKS型吻合器はペッツを1本ずつ挿入し,吻合を行なうが,著者の用いているEEA型は三種類の直径の異なるdisporsable cartridgeを用いている.cartridgeはべッツと全周性のナイフが組込まれてあり,組織の縫合に際し,C型ペッツが圧挫によりB型に折りまげられ縫合が行なわれる.現在disporsable cartridgeの直径は25mm,28mmおよび31mmの三種類に分かれており,個々の腸管の口径により使い分けられている.このEEA型吻合器械の附属器械としてpurse-string sutureを容易にする鉗子と腸管の口径を測定する器械があり,吻合操作を容易としている(図2).
さて現在までにこのような時代背景をもつ吻合器械により臨床応用における報告は多くみられるが4,5),器械吻合における吻合部の創傷治癒などについての基礎的研究は少く,病理組織学的検討にとどまつているのが現状である6).そこで今回,著者は用手吻合において,その創傷治癒経過が最も優れているといわれているGambee吻合7,8)とEEA型器械吻合の創傷治癒に関して,比較検討することにより,器械吻合の有用性について再検討を加えた.これらの成績を基にして,現在,臨床的にEEA型吻合器を用いている.すなわち食道離断術,食道・空腸吻合,結腸・結腸吻合術を施行してきたが,全例において縫合不全はなく,手術時間の短縮も可能であり,好結果をおさめている.
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