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はじめに
経皮的脾門脈造影は通常経脾門脈造影percuta.neous splenic portographyまたはpercutaneoussplenoportographyといわれている.各種の門脈造影があるなかで最も普及した門脈造影法である.経脾門脈造影法は経皮的に脾臓を穿刺し造影剤を脾内に注入して門脈系を造影する方法である.1951年,Abeatici,Campi1,2)らは犬の脾臓に経皮的に70%diodone 60〜90mlを急速注入し,1秒後にX線撮影を行ない脾静脈,門脈が造影されることを発見し,同じく1951年,Léger3)は臨床例で開腹手術時に経脾門脈造影を行ない,更に同年,Boulvin4)らは臨床例で非手術的に経皮的脾穿刺による円脈造影に成功して以来この造影法が急速に発展して来た.開腹を必要とせず,手技が簡単で肝外門脈の閉塞,狭窄や側副血行路を明瞭に造影し,門脈圧亢進症の診断,手術適応の決定,手術方法の選択などに有用であり,門脈圧亢進の原因探究にも役立つて来た.夏に脾静脈,肝外門脈に狭窄,変位を来たす疾患,例えば胆道癌,膵疾患,胃癌およびその転移などの間接的診断にも役立ち,また肝内門脈枝の変化からある程度以上の大きさの肝腫瘍,肝嚢胞の診断にも利用しうるものである.しかし経脾門脈造影法は手技は一応簡単ではあるが,種々の合併症もみられ,一方では1953年Seldinger5)の創案によつて経皮的カテーテル動脈内挿入法が発表されて選択的動脈造影が頻繁に行なわれ,この手技が急速に進歩するにつれて経脾門脈造影によつて得られる情報が同じく開腹手術を行なわずに手技的に容易な選択的動脈造影の静脈相の読影によつてかなりの情報が得られるようになり,経脾門脈造影は正確な門脈系の側副血行路造影を主眼とする検査手技として,その用途は当初よりせばめられて来ているのが現状である.事実超選択的左胃動脈造影によつて左胃静脈の関与する食道静脈瘤は明瞭に造影され,また肝門部での肝外門脈閉塞などの重要な情報が選択的腹腔動脈造影或いは上腸間膜動脈造影によつて得られているのが現状である.
現在経脾門脈造影が使用されるのは選択的動脈造影を連続撮影によつて行ないえない条件下で,開腹せずに門脈圧亢進症の診断,門脈系側副血行路の情報を得るために限定されているのが実状である.一方,胆道癌や膵臓癌での門脈幹への浸潤程度は,経脾門脈造影で開腹前に情報をうるよりは開腹後の上腸間膜静脈性門脈造影により,正確な門脈系の情報入手と共に腹腔内での癌進展の情況を合わせて手術方針確定により有用であり,膵?胞や慢性膵炎では経脾門脈造影で脾静脈の情報は得られるが,狭窄乃至は閉塞の所見が得られるのみで,実際は膵癌と良性膵疾患との鑑別は脾静脈変化があまりにも敏感に表現されるために,むしろむずかしいのが実際であろう.
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