Japanese
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特集 最近の手術材料と器具
縫合材料
Suture materials
田辺 達三
1
Tatsuzo TANABE
1
1北海道大学医学部第2外科
pp.29-35
発行日 1978年1月20日
Published Date 1978/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407206873
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はじめに
外科治療法がメスを用いる手術によつて,病巣を除去し機能を再現させ,患者を病苦から解放して社会復帰させることを目的としている以上は,メスによつて生じた手術創は早期に治癒して障害を全く残さないことが必要条件となる.この場合に手術の基本として切離のほか,縫合糸による結紮,縫合,吻合が行なわれるので,縫合糸を用いたこれらの手技もまた前述の必要条件を満たさねばならず,手術に用いられる縫合糸の重要性が知られる.したがつて縫合材料についても多くの検討がなされているが,より優れた縫合材料の応用はむしろわが国では遅れているようにもみえる.それには「弘法筆を選ばず」とか慣れを重んずる外科医のややもすれば陥りやすい習性,新しい縫合材料に対する認識不足,さらに新しい縫合材料の応用を制限する価格や保険診療制度などの問題点が,かなり解決されながらもみられる.
理想的縫合材料の条件としては,(1)品質が均一であること,(2)十分な抗張力があり,結節強度が大きいこと,(3)異物反応,組織反応がないこと,(4)病原性がないこと,(5)消毒が容易で完全に滅菌されること,(6)一定期間で吸収されること,(7)製造過程が簡単で容易に入手でき低廉であること,(8)縫合操作が容易にできること,すなわち,ほつれない,結びやすい,なめらかに通過する,結び目がとけにくい,などの諸点が挙げられてきている.
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