Japanese
English
特集 縫合法—反省と再検討
最近の縫合材料の知見
The view of the recent surgical suture
秋山 太一郎
1
Taichiro AKIYAMA
1
1日本医用高分子材料研究所
pp.1125-1129
発行日 1975年9月20日
Published Date 1975/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407206330
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はじめに
外科手術そのものが生体に大仕掛けな手術侵襲をあたえることになるので,その後仕末的な糸があたえる障害などはささやかなものであるとしている傾向がないでもない.しかし,形成外科のように創の仕上りを重視するところでは,糸から縫合法までかなり吟味しているが,一般外科としては体内用人工物1)(補てん材,人工臓器)の研究の場から見ると,縫合糸に対する感覚はまず大雑把なように受けとられる.例えば絹糸,またクロム化した腸腺などでは,はつきり為害性を見越して使つている.一方の体内用人工物の是非を判定するには免疫学的,また周囲組織,細胞の動態などきわめて神経質になつてあさっているが,縫合糸の方は縫えさえすればいいというなど無神経ではないにしても,それなりの根拠はある.絹糸,クロミック腸線は多少為害性はあつても,それが合目的であること,長い間の使用経験から許しうる範囲のものであることなど,かなり妥協的なように見える.しかし糸のホストである生体システムの仕組みは,今日生体高分子の構造や機能だけを見ても大部あかるみに出てきたとはいうものの,大勢はまだまだ不明の点が多い.このように十分につかまえきれていないホストを相手にするのだから,いつ,何がおこるか予測できないというのが本当であろう.したがつて糸としては材料学的な立場から現代高分子学の手の及ぶかぎりの最大限をつくした上で,さらに時間をかけ,生体内の挙動をじつくりと調べあげ,例えば第1図のように,確実なものをつかまえるという態度が必要であろう.この点最近相次いで現われる縫合糸をみていると,かなりこうした感覚で扱つているように思える.
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