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はじめに
上部消化管出血は,吐血または下血を主徴とする急性症であり,出血源が胃に由来することが多いため,通称,胃出血ともいわれている.この出血には極めて少量から,致死の大量まで,幅広い出血量が存在する.出血が大量の場合,とくにショック症状が伴つているときは,その応急対策は極めて重大な問題となる.内科,外科のいかんを問わず,第一線の医師として,大量出血の際にはどのような方法で実際に治療していくかを早急かつ適確に決定しなければならない.「大量出血時の応急対策」ということばのなかには,多くの問題を含んでいるが,もつとも端的にいつて救命を第1目標として早期治療を要する対象の選択,治療方針の決定ということがもつとも眼目となるものであり,その面で,緊急手術の適応如何ということが重大なポイントとなる.上部消化管出血に対する対策といつても,その出血程度はさまざまであり,その病態に応じて内科的保存療法ですむ場合と,外科的手術療法が考慮されなければならない場合とが明確に判断されなければならない.とくに大量出血の場合には,内科,外科いずれか一方に偏した目でみることは危険といわなければならない.大量出血であるがゆえに,無差別に緊急手術を行なうという考え方は現在,ほとんどとられていない.大量出血のうち,どの程度の応急対策によつて,緊急と待期手術との2つのグループに選び出すことができるかということが問題といわねばならない.このような点から考えても,外科医,内科医ともに,出血症例に対しては連繋のよい一貫した経過観察を行なつて治療方針をたてるのが原則である.
とくに本稿においては,著者らの与えられた分担は「急性上部消化管出血の応急対策」ということであるから,総論的な立場から,出血病態の把握,その判断処置,治療方針の立て方,治療方法の実際的方法の2,3について述べる.
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