講座
ハリ麻酔—⑦その歴史的考察と展望
許 瑞光
1,2
1昭和大学耳鼻咽喉科
2帝京大学眼科
pp.1053-1056
発行日 1976年8月20日
Published Date 1976/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407206567
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"痛み"その複雑なメカニズム
前回まで,ハリ麻について自験例を中心に,いろいろと述べてきた.しかしハリとは一体なになのか?中枢と末梢に対する作用があり,ある程度経験的に解つてきているが,それ以上になるとspeculationの域をでない.また自験例を中心に述べてきたさいに,その作用をより中枢においてきた.しかし,顔面神経麻痺を示した,7例のうち有効であつた5例について言えば,おそらくハリの末梢作用によつて顔面神経マヒが改善したと考えている.(この症例の中には4歳の小児も含まれている)このようにハリは麻酔以外にもいろいろの治療に利用されてきた.その中には,聴覚や色覚の向上,片マヒの治療,40肩,50肩,はつきりしない原因による痛みなどがある.しかしハリ麻について言えば,そのメカニズムの解明は,あるいは痛みのメカニズムの解明への1つの道になるかも知れない.痛みについては古くより諸説があり,たとえばパターン説,specific説,あるいはgate control説がある,また日常の診療にさいして,痛みがある場合,とんでもない場所がtrigger pointになつていることもよく知られている.そして,このようなtrigger pointとハリのツボが一致することがあるのもまたよく知られている,またファントムpainという現象が知られている.このような事実のいずれもが痛みの出現とその本質に深いかかわり合いがあると思われる.しかしこのような事実を1つの体系の中で述べることは,臨床医である筆者の能力を超えることであり不可能である.
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