講座
ハリ麻酔—⑬ハリ麻酔からハリ治療へ(最終回)
神山 守人
1
1杏林大学医学部麻酔科
pp.1030-1032
発行日 1977年8月20日
Published Date 1977/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407206793
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はじめに
ハリ麻酔は多くの点で学問の進歩に拍車をかけたことは否めない.その1つは,一時の疼痛治療に用いられるハリの電気刺激による和痛が手術に耐えうるものであることを証明した.また,ハリ麻酔は,よく言われるように痛みの研究を刺激した.しかし実際の臨床についてみると,本邦では全身ならびに局所麻酔が比較的完成に近い状態で使用されているため,これらよりもハリ麻酔が著しくすぐれている点はそう多くはなく,したがつて現在ハリ麻酔は一時熱狂的に受け入れられたにしてはそれほど大きな臨床の場を持つてはいない.むしろ臨床対象はせばめられつつあり,それよりもこのハリ麻酔器を利用して,その交流波形による電気刺激をもつぱら痛みの治療に利用する方法が行なわれている.
痛みに対するハリ治療としては留置針,捻針などの機械的刺激と,いわゆる"良導絡"と称する200μA程度の直流を通電する方法があるが,ハリ麻酔器を利用すると同じ電気刺激ながら著しく効果の高いものが得られる.したがつて最近では,もつぱらこの方式のものが用いられる傾向がある.
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